和歌を大切にして美しい日本語として耳に響く『謡』
櫻間會では先達の教えを大切にして美しい謡を目指しています。
櫻間家 二十一代当主 櫻 間 紋理右陣
能楽の謡、謡曲は文章の美しさに加え親から子へ、師匠から弟子へと代々伝承されて来た美しい節回しで耳に心地好く響きます。
謡曲の文章は源氏物語、伊勢物語や平家物語と言った日本を代表する古典文学や語り物を典拠にして万葉集、古今和歌集、新古今和歌集やその他の和歌集など日本人が大切に受け継ぎ伝えて来た美しい日本語。即ち和歌と呼ばれる七五調の言葉により織りなされています。
私の師匠でもある先代金太郎師は謡の真髄に付いて、その美しい和歌が日本語として聞く人の耳に届く事が大切だと教えていました。
ですから私も如何に謡の和歌としての美しさを崩さずに観客(視聴者)に伝える事が出来るかを旨として謡って居ります。
少し専門的になりますが、謡曲の技術的な事を申し上げます。
前述の通り謡曲の文章は和歌の七五調の12文字で一行が出来上がっていますが、拍子(リズム)は八拍子です。
『平ノリ』と、言われる拍子の取り方では一文字を半拍の長さで謡います。が、八拍の中には16文字が入る計算ですから4文字程、字足らずになります。其処で多くは1文字目、3又は4文字目、6又は7文字目を伸ばして其々を二文字分に謡い(この謡方を持チ合セ或いは持チと、言います)、息継ぎを一文字分休む事で12文字の一行を16文字分として謡っています。
しかし、この「持チ」と言う和歌にとっては無駄な伸ばしが美しいはずの日本語を或いは耳に当たる日本語を別の言葉としてしまう事が有ります。
例えて言うと『苦』(ク)を伸ばして謡うと「ク」が「クー」となり聞く人によっては『空』(クウ)となります。
この様な事が起きないように伸ばし(持チ)を節回しに隠したり、上の句と下の句の間を微妙に開けて(もったいを付けて)謡う事や、一行の謡始めを強く息を沢山使って謡うなどして無駄な伸ばし(持チ)を極力減らした『謡』を目指しています。
音楽(歌唱)としての『謡』、美しい和歌としての『謡』、美しい日本語として耳に響く事を目指す櫻間會の『謡』を一度は耳にして頂きたいと思います。
より多くの皆様に舞台に脚をお運び頂き御高覧賜りお聞き頂きたいと願っております。
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